保護者との連携の重要性
親および、祖父母や里親などの主たる養育者は、幼児の生活において最も重要な存在です。子どもは、こうした人物から家庭の文化や宗教的信仰を学んでいきます。親や主たる養育者は、子どものことを誰よりもよく知っています。保護者は子どもにとって最初の先生であり、子どもの態度や発達に強い影響を与えるのです。
近年、子どもの教育および保育における保護者の役割に対して、明らかな意識の変化がありました。児童法(英:1989年)では、自分の子どもをどの学校に通わせるかの意向を表明できることや、自分の子どもの進歩や成果に関する情報を得る権利があることなどの、明確な権利が保護者に与えられました。
2008年から、イングランドの就学前教育基礎段階(Early Years Foundation Stage)では、保護者と専門家の間、また子どもが参加するすべての環境の専門家の間での連携について、明確な枠組みが定められています。
チャイルドマインダーの多くが子どもを未就学児サークルや幼稚園、保育園、学校に連れて行くことになるため、このことは非常に重要となります。
多くの教育機関や保育施設では、子どもの保育や教育において、保護者をパートナーとすることを目指す方針を定めています。家庭的保育者として、「保護者はパートナー」という方針を持つべきでしょう。この方針により、初対面の時点から保護者と前向きな関係を築くことの重要性は強まります。
家庭的保育者と保護者との関係は、多くの場合、親密なものとなります。保護者はチャイルドマインダーの自宅を定期的に訪れ、プライベートナニーは子どもの自宅に住み込みの場合もあります。したがって、お互いによく知り合うことにもなるのです。
子どもの保育と福祉のあらゆる面において、子どもの保護者の希望を考慮し、尊重することが重要です。例えば在宅保育中の日課は、可能な限り保護者の希望に沿うことが重要です。これは、単に子どもの休息と睡眠の時間に関することだけではなく、テレビを見る時間はどれくらいにするか、またどの番組がふさわしいか、といったことも含まれる場合があります。
重要用語 |
---|
日課 - 通常、規則的に計画される、習慣的で、予定された出来事や活動 |
保護者が在宅保育を選択する主な理由の1つは、自分たちの自宅(ナニーを雇う場合)または、できる限り自宅と似た環境で、子どもを保育してもらいたいという思いからだといえます。そのため子どもの保育に関わりうるさまざまな文化的な慣行について、検討していく必要があります。
複数の家庭の要求や希望に応えるためには、妥協点について検討し、合意しておく必要があるかもしれません。
一部の子どもについては、食事の準備に関して考える必要があるかもしれません。文化によっては、食品の取り扱いと保管について、また例えば、どの肉やその他の食品を排除するかについて、明確なガイドラインと、時にはかなり厳しい規則や戒律があります。自分が食べるものを誰もが食べるとは思わないこと。自分のやり方が正しい、または最善であると考えてはなりません。一般的な食習慣に関する詳しい情報については、下記を参照のこと。
仏教徒 | ヒンドゥ教徒 | ユダヤ教徒 | モルモン教徒 | イスラム教徒 | ラスタファリ主義者 | ローマカトリック教徒 | セブンスデー・アドベンチスト教会 | シーク教徒 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アルコール | × | × | – | × | × | × | – | × | – |
動物性油脂 | × | 一部 | コーシャーのみ | – | 一部のハラール | 一部 | – | × | 一部 |
牛肉 | × | × | コーシャーのみ | – | ハラール | 一部 | – | 一部 | × |
チーズ | – | 一部 | 肉と一緒に取らない | – | 一部 | – | – | ほとんど | 一部 |
鶏肉 | × | 一部 | コーシャーのみ | – | ハラール | 一部 | – | 一部 | 一部 |
卵 | 一部 | 一部 | 血斑のないもの | – | – | – | – | ほとんど | – |
魚 | 一部 | ひれと鱗のあるもの | 鱗、ひれ、および背骨のあるもの | – | ハラール | – | – | 一部 | 一部 |
果物 | – | – | – | – | – | – | – | – | – |
羊肉・ラム | × | 一部 | コーシャーのみ | – | ハラール | 一部 | – | 一部 | – |
乳製品・ヨーグルト | – | レンネットを使用していないもの | 肉と一緒にとらない | – | レンネットを使用していないもの | – | – | ほとんど | – |
ナッツ | – | – | – | – | – | – | – | – | – |
豚肉 | × | まれに | × | – | × | × | – | × | まれに |
豆類 | – | – | – | – | – | – | – | – | – |
貝・甲殻類 | × | 一部 | × | – | ハラール | × | – | × | 一部 |
茶・コーヒー・ココア | -ただしミルク無し | – | – | × | – | – | – | × | – |
野菜 | – | – | – | – | – | – | – | – | – |
-:飲食する ×:飲食しない
断食は個人の選択の問題であることが多いが、しばしば次の場合が見られる。
- ユダヤ教徒は贖罪の日に断食する。
- イスラム教徒はラマダンに断食する。
- モルモン教徒は月に一度、24時間断食する。
- 一部のローマカトリック教徒は金曜日には肉を食べたがらない。
アフリカ系やカリブ系の子どもの保育にあたる場合、髪と肌の手入れに関する流れが非常に個人的なものであり、保育の日課においてそのことを考慮に入れる必要があると感じるかもしれません。
慎み深さに関して確固たる見解を持つ文化もあり、子どもが遊ぶ時やトイレを使用する時に着る服に影響する場合があります。この場合も在宅保育の日課は、保育者がこうした要因について検討したことが分かるものでなければならないのです。
ある家庭が特定の文化や集団の出身であるからといって、すべてにおいてその文化の慣行に従っているとは考えてはなりません。
保育者にとって、保護者が望む子どもの保育につながる家庭的保育の日課を実現する唯一の方法は、保護者に尋ねることでしょう。ここでも、特に他の子どもに影響する日課がある場合、妥協点を見いだす必要があるかもしれません。そのような場合、合意に達したら必ず合意内容を守ることが必要です。
ケーススタディー:6人の子どもの保育にあたるポールとショーナ |
---|
ポールと妻のショーナはともに登録チャイルドマインダーです。彼らには、まだ一緒に暮らしている18歳の一人息子がおり、地元の大学に通う正規の学生です。彼らの住まいは海岸沿いで、特に夏には保育する子どもをよく海辺に連れて行きます。 現在は、ポールとショーナは毎日4人の子どもを保育しています。最年少の子どもは3カ月、最年長は8歳です。その他の子どもは4歳と7歳です。 ポールとショーナは、保護者がトリニダード・トバゴ人である18カ月の双子の女の子の保育を依頼されました。
|
評価への課題 |
評価基準3.1 |
---|---|
保育サービスのあらゆる面で保護者と連携することの重要性を説明する。 【保育・教育顕彰評議会タスク6】 保護者との関係を築く上で、認可書を利用することができる。これは、保育者の専門家としての保育水準を保護者に説明する契約のようなもの(法的拘束力はない)と考える。 使用する言葉は、適切で、はっきりと明快で、正確なものか確認すること。見下した言い方をしたり、業界用語(職業に特有の用語)を使用したりしない。保護者との連携がなぜ重要であるかを説明する。その際、この点を法律や現在の適切な実践と関連づけて説明しようと考えるかもしれない。 この評価タスクは、保護者と連携するための方針や手順をまとめるのに役立つでしょう。あなたの方針や手順は、保育・教育顕彰評議会タスクを実施しない場合、証拠として使用されうるが、場合によっては、保育業務におけるこの点の重要性について説明する短いレポートも作成するよう求められるでしょう。 |
保護者との情報共有
前向きな協力関係を築こうとするならば、保護者と効果的に情報を共有することが重要です。年長の子どもはよく、どんなことをしたか、その日はどんな日であったかについて、保護者に話します。何を食べたか、またその日に学校で必要になりそうなものについて、在宅保育者に話すこともあります。年少の子どもは、まだそのような話はできないため、保護者と保育者の間で情報を交換する仕組みが整っていることが、必要不可欠となります。
新規登録者用書類一式
多くの登録チャイルドマインダーが、保護者からの質問を受けて、保育サービスの概要を記載した情報シートを使用することが、第一歩として役に立つと感じています。さらなる情報を盛り込んだ新規登録者用書類一式を作成し、初回の顔合わせの後に保護者に渡す保育者もいます。
登録チャイルドマインダーの声
「私のチャイルドマインダー業務に関する情報シートを保護者にお渡しすると、お持ち帰りいただけるので、出だしとしてよかったです。自分の名前と電話番号、それにこれまでの経験や資格、保育対応時間と料金を簡潔に載せました。その後、新規のご家庭との間で契約についてお話しする時に、さらに詳しい新規登録者用書類一式をお渡ししました。」
新規登録者用書類一式は、保護者が持ち帰り、保管して参照できるので、必要不可欠な情報を交換する上で好ましい第一歩となります。新しい雇用者候補に自分のことをよりよく知ってもらえるよう、履歴書に補足と前の雇用者からの書状を添えるナニーもいます。
自分の保育業務に関するパンフレットを作成するチャイルドマインダーもいます。保護者に何を知らせるかは保育者次第ですが、次の項目を盛り込むのが理想的です。
- 氏名
- 郵便番号(この段階では、正確な住所を知らせたくない場合も考えられます。)
- 電話番号(固定電話および携帯電話)
- 保育可能な曜日および時間。休業日についての情報も含む。
- 1日あたり、時間/回数あたり、休日および延長時間の料金
保護者が支払う料金に対して提供されるものを、詳細に記載する必要があります。保育者の自宅で保育を行う場合、おむつや食品、飲み物は提示する料金に含まれているかどうか。請求する可能性がある追加料金を盛り込み、また未就学児クラスや課外活動などの支払いは誰が行うかについては極めて明確にしておく必要があります。お迎えが遅れた場合や休日、病気の場合、予約料、遅延損害金についても検討が必要になるでしょう。
- 疾患や緊急事態のため、子どもを保育できない場合の手配
- 1日の流れの計画についての概要。これを見れば、保護者は保育者がどこにいそうか、また連絡を取るにはどの時間帯がよさそうかを把握できます。
- 子どもと行う活動例の概要
- 保育者登録および前回の検査についての簡単な説明
- 保護者と保育者の双方が子どもの保育開始前に記入する、詳細な登録書類。これを契約書とすることも可能です。これに、子どもについての記録用紙およびその他の情報を記入する用紙を含めることもあります。
こうした情報の多くは定期的に更新し、最新の状態を保たなければならなりません。例えば、休業日や契約に対する何らかの変更がこれに該当します。
保護者は、子どもについての日々の情報を求めるでしょう。これは、朝の預かりや夕方のお迎えで顔を合わせた時に、情報を知らせることができます。
多くのチャイルドマインダーは、保育中に自分の携帯電話やデジタルカメラで写真を撮影し、保護者に送信しています。保育者が、例えば乳児や幼児が前夜よく眠れたかどうかを知ることは、重要なことです。また保護者が、自分の子どもが保育時間中にどの程度飲食し、休息したかを知ることも重要です。しかし、保護者にとって仕事の日の始まりは慌ただしいものであり、また1日の終わりには疲れているかもしれないことを留意しなければなりません。
保育連絡帳を使用し、保育者から保護者に自宅で読んでほしい重要な情報を記録し、保護者からも保育者あての情報を書き込めるようにしている保育者もいます。ナニーの場合、子どもが寝てしまった後に、就業中の保護者からの電話やEメールを通じて、情報交換が行われる場合もあります。保育者と保護者がどのような方法で情報交換を行う場合でも、守秘義務には細心の注意を払わなくてはなりません。そのため、ある子どもについての話を、他の保護者や子どもがいたり、話が耳に入ったりする場所で行うことのないように注意します。
考察 |
---|
あなたが新規登録者用書類一式をまとめる際、どのように作成し、何を含めるか考えましょう。
|
登録チャイルドマインダーの声
「保護者が自分の小さな子どもに、その日は何をしたのか問いかけると、子どもは『別に何も。遊んでいただけだよ』というように答えることが、何度あったか分かりません。ですから、毎回保育終了時に保護者と私が情報を交換することが、とても重要になるのです。」