好ましい行動を育成するための基本ルールの作り方

好ましい行動を育成するための基本ルールの作り方

 
保育者はキャリアの極めて早期に、保育を行う家の中で好ましい行動を育成するための枠組みや基本ルールを確立することが重要です。家のルールはおそらく、子ども、保護者、保育者にとって重要なこと、意味のあることに基づき決めることになるでしょう。例えばほとんどの人は、子どもの安全を保つことは非常に重要だと考えているため、この枠組みでは、子どものけがを防ぐことに重点を置くことができます。

基本ルールには、次のことを含めるとよいでしょう。

  • 子どもは玩具や備品を大切にする。
  • 子どもは保育者が一緒にいるとき以外はキッチンに入ってはいけない。
  • 子どもは門を開けてはいけない。

これらの基本ルールは紙に書くわけではありませんが、子どもが保育の日常の中で学ぶものの一部となります。年長の子どもや保護者とは、このルールについて話し合い、なぜこれらのことが重要なのか、またもし基本ルールや期待することに同意しない場合、何が起きる可能性があるかについて話すとよいでしょう。

行動に関する基本ルールや期待される内容は、次のことを基にすることもできます。

  • 子どもに、他の大人や子どもに対し危険なこと、不快なこと、または苦痛を与えることを一切させない。
  • 他人の家で歓迎されないこと、他人に容認できない、または不快だと思われることをさせない。
  • 他人の所有物に損害を与えることをさせない。

行動についての基本ルールや期待される内容については、簡単な短い文に書き出してもよいでしょう。これは行動に関する方針となり、最初の面談で保護者に渡して、話し合うこともできます。期待や基本ルールを作成し共有することで、子どもは保護されていると感じることができるです。家のルールがどんなもので、なぜ設けられているのかを理解すると、それらに従う可能性も高まるでしょう。

子どもは、ルール、期待、および線引きがころころ変わるものではないことを知り、理解している必要があります。すべての子どもに対して、首尾一貫して揺らがずに、保育者の線引きを適用することが重要です。一貫した態度で子どもに接していないと、行動の問題につながるおそれがあります。ルールを知り、線引きがされていることを知ると、安心感が持てるようになるのです。

チャイルドマインダーにとって避けられないことですが、保育者の家で確立されている期待およびルールは、子どもの家庭で容認されているルールと異なる可能性があります。
例えば保育者が自分が一緒にいるとき以外、子どもは一切キッチンに入ってはいけないとしても、子どもの家ではキッチンに入ることが制限されていない可能性もあります。したがって子どもに対して明確かつ簡潔に、なぜそのルールを設けているのかを説明することが非常に重要になります。
例えばある登録チャイルドマインダーは次のように話しています。

登録チャイルドマインダーの声
「私はあなたや、ほかの子どもが、安全で、危険な目に遭わないようにしたい。キッチンには、電気ポット、オーブン、食器棚の扉など、あなたや他の子どもにけがをさせるかもしれないものがあります。私はどの子にもけがをしてほしくないので、キッチンに入るときはみんなで一緒に行きましょう。そうすれば、みんなが安全でいられます。」

ケーススタディー:ママはさせてくれる
登録チャイルドマインダーとして働くジェーンは最近、3歳の双子の兄弟の保育を始めました。2人はよく椅子やソファの上で飛び跳ねます。ジェーンは2人に、落ちてけがをするかもしれないこと、他の子どもにも家具の上で飛び跳ねさせていないことを説明しました。ジェーンはどうしてそうしてほしくないのか、また庭では登ったり飛び跳ねたりしても構わないことを説明しました。2人はジェーンに、ママは家でさせてくれると言いました。

ジェーンは母親と話す機会を設け、家具の上で飛び跳ねると、落ちてけがをするのではないか心配だと説明しました。また他の子どもにもこうしたことはさせていないことも説明しました。ジェーンは母親に、最初の面談で話し合った、行動に関する方針を思い出してもらいました。母親は、息子たちがジェーンの家にいるときは、ジェーンの言うとおりにすべきだと合意しました。そして息子たちと話し合い、ジェーンが保育をしてくれているときは、ジェーンに言われたとおりにしなければならないと説明することにも合意しました。

  • あなたはジェーンのやり方に賛成ですか。また賛成、あるいは反対した理由を説明してください。
  • この状況に対処する方法は、他にありますか。あるとすれば、どんな方法が考えられますか。
  • 母親が、ジェーンが些細なことで騒いでおり、問題ではないと感じた場合、あなたならどのように感じますか。

 
しかし例えば子どもは大人と一緒でなければキッチンに入ってはいけないなど、ナニーが定めた家のルールがまったく同じこともあり、その理由はおそらくチャイルドマインダーのそれと非常に似ています。子どもの保護者が家にいるとき、子どもにはそうした制限がない可能性もあります。簡潔かつ明確に子どもに説明すれば、筋が通って矛盾しないものと理解してもらえるでしょう。

できるだけ早く基本ルールを確立することは、保育者、子ども、保護者および、チャイルドマインダーの場合はその他の家族にとっても非常に重要です。これは期待されている内容をみんなが知ることを意味し、一貫したアプローチにつながるからです。

基本ルールは行動を制限する線引きから成り、例えば「階段のゲートを開けてはいけない」など、簡単なルールにして、破ってはいけないことを子ども全員に教えます。基本ルールと期待する内容を確立し始める際に、できることがいくつかあります。

  • 適切なときにいつでも、子どもにこれらのルールを思い出させて、ルールを覚える手助けをする。例えば学校から帰ってきたら、他の子どもがつまずかないように、かばんと荷物を安全な場所に置くよう求める。
  • なぜルールがあるのかを説明する。ルールがある理由を知っていると、子どもがルールを覚える可能性がずっと高まる。
  • 「もう家に入る時間ですよ」など、簡単で明確な言葉を使う。
    「そろそろおねえさんを学校から連れて帰る時間だから、すぐにおもちゃを片付け始めないと」などと言うとかえって混乱してしまいます。子どもに頼んでいることは何なのかを考えましょう。
    また「家に入る時間まであと5分」「家に入る時間まであと2分」など、これから起きることを先に言っておくと、役に立つ場合があります。
  • ルールを破るとどうなるか、明確に簡単な言葉で説明する。「投げ合いをやめないと、ゲームを取り上げますよ」などと言うとよいでしょう。
  • 書き出すとよいルールもあります。これは学齢期の子どもに特にあてはまります。学齢期の子どもはこうした作業をとても喜ぶことが多いです。子どもに「この家のルール」のポスターや図を制作させてもよいでしょう。
  • 子どもがルールを守っているときや、上手に楽しく遊んでいるときは、必ず褒め、自信を与えましょう。
NCMAの提言
年少の子どもが覚えられるように、家のルールを絵に描いてみよう。

 

好ましい行動を育成するための方法

好ましい行動を育成するために使用できる方法は数多くあります。ある方法はある子どもにとっては非常に効果的ですが、別の子どもにはまったく効果がないこともあります。したがって用いる方法がそれぞれの子どものニーズに合っていることが重要になります。
子どもはそれぞれ固有の存在であり、したがって用いる方法は年齢と発達段階に応じて異なることに留意します。

子どもの行動に対する保育者の反応は、その行動が心配の種であるかないかにかかわらず、非常に多くの場合、その子どもにメッセージを送ることになります。保育者は子どもにいつでも前向きなメッセージを送ることを常に目指すべきです。
困った行動を起こす子どもと向き合うときは、前向きでいることが非常に難しいこともあります。それでも言いたいことを前向きな言い方に変えるようにすることを心がけます。例えば、「それをしてはだめ」と言うのではなく、「こうしましょう」と言うようにしたり、「おもちゃをそこに置きっ放しにしてはいけません」と言うのではなく、「おもちゃを箱に一緒に入れましょう。そうすればつまずかないね。」と言う。こうした前向きな言葉への言いかえが非常に大切です。

子どもを危険や危害から守るために、「いけない」、「だめ」と言うときもあるでしょう。これらは子どもに即座に反応してもらいたい状況で使用します。しかし「いけない」や「だめ」のような言葉を頻繁に使用していると、子どもがすばやく反応しなかったり、無視したりすることもあり得ます。

心配の種となる行動に対応する方法

ある家族とその子どもに最初に会うときは、その家庭の行動についての考え方を尋ねましょう。登録チャイルドマインダーの場合は、行動に関する方針の見解を新規登録者用書類一式に含めたり、契約について話し合う初回面談時に示したりすることもできます。
家族構成や慣習にはいくつか異なるものがあり、これらは保護者による子どもの行動の管理方法に影響を与えることがあります。こうした違いを尊重し、理解することが重要なのです。

子どもの最善の利益のため、ナニーやチャイルドマインダーなどの在宅保育者および保護者は、首尾一貫して行動に対処するようにします。これが行われない場合、子どもは非常に矛盾したメッセージを受け取ることになり、混乱し、当惑してしまうでしょう。
保護者は子どもの主な教育者と見なされるべきです。保護者は自分の子どもを非常によく理解しているので、家庭的保育者は子どもが自分の行動を管理できるよう、保護者と協力する必要があります。

多くの保護者は、自分の子どもの行動が心配の種となっていることに気づくと、ストレスを感じ、悩み、怒ることさえあります。しかし子どもの保育者と効果的な協力関係にある場合は、より多くの支援を受けていると感じるので、こうした否定的な感情がそれほど強くならないことがあります。
保育者が保護者と効果的で良い関係を築いていれば、子どもの行動が家庭内で起きている何かと関連している可能性があると疑われる場合に、当事者全員にとって対応がスムースになります。

子どもの行動に関する心配事はすべて、保護者と話し合うことが非常に重要です。保護者と話し合いをすることは、子どもにも知らせるべきです。年長の子どもは、話し合いの場に立ち会わせてもよいでしょう。
これは「たたくのをやめないと、ご両親に言いますよ」というような脅しと見なされるべきでなく、子どもにとって首尾一貫したアプローチである必要があります。「他の子どもと遊ぶときにどんなことが起き、どんな気持ちになるのか、みんなで座って話し合いましょう」と言う方が、ずっと前向きで子どものニーズを尊重しているように聞こえるでしょう。

懸念は行動の1つの面のみから発生するのではなく、複数の懸念材料から成る場合もあります。最初に取り組むべき最重要問題が何かを決めることが大切です。
例えば他の子どもを噛み、たたき、分かちあうことができない子どもを保育しているとします。まだ小さすぎて「分かちあう」ことの意味がわからない可能性もありますが、他の子どもを噛んだり傷つけたりするのをやめさせようとすることはできます。

適切な実践のキーポイント
困った行動への対処

  • 肯定的な方法で子どもを導いて気をそらし、心配の種となる行動が発生する機会が増える状況を回避する。
  • 首尾一貫して揺らがない。「だめ」と言ったらそのとおりにし、基本ルールを、それぞれの子どもの年齢、発達段階、およびニーズに応じて、一貫して揺らがずに適用する。
  • 対立を避ける。子どもの気をそらしたり、優しくその場を連れ去ったりする。前向きな言い方で、別の遊びやおもちゃを勧める。
  • 基本ルールが守られなかったことに、賛成しない、または不満であることを示す。子どもは本来、大人を喜ばせたいと思っているので、子どもの行動に賛成しないことを示すことは、一部の子どもにとって二度とそうした行動をとらない強力な理由となる。
    ただし、子どもの自尊心を傷つけたり、当惑させたりすることで、不賛成や不満を示さないこと。子どもに対して不賛成を示しているのではなく、子どもの行動に不賛成を示していることに留意する。
  • その行動が基本ルールにそぐわない理由を説明し、その子どもの年齢が十分に高ければ、その行動によって起こりうる結果についても説明する。
  • 良い手本になる。子どもは大人や周りの人の行動を真似ることで学ぶ。保育者が怒ったときに、大声を出して不適切な言葉を使えば、子どもは自分が腹を立てたとき、そうすることが容認されると学ぶ。
  • 子どもが状況を制御する機会を持てる環境を作るようにする。これは通常、子どもに「力を与える」と呼ばれる。例えば子どもがすることについて、または特定の活動をする方法について、より多くの選択肢を与えることができる。
    子どもに達成可能な特別な責務を与え、多くの賞賛と感謝で報いることもできる。これは子どもに力を与えるだけでなく、自信や自尊心を形成するのにも役立つ。

 

考察
一部の保育者は、困った行動への対処に役立つ効果的な方法として「タイムアウト」を使用しています。しかし「タイムアウト」の長さは、それぞれの子どもの年齢と発達段階に応じて決めるべきです。タイムアウトは、子どもに大人の注意を与えないものですが、それでも子どもを監督する必要があります。

子どもが非常に大きな懸念となる行動を示している場合、その子どもをその行動と区別するのが難しくなるときがあります。例えば叩く子どもは「とても手に負えない子」と言われます。これは子どもがしたことではなく、子どもに着目しており「手に負えない」という言葉を使わないようにすべき理由をよく表しています。より望ましい方法は、たたくと痛いこと、たたいてはいけないことを、その子どもに話すことです。
これはその子どもがしたことが間違っているのであり、最初の例のように、その子ども自身が間違っているわけではないことを示すことになります。

この方法は、子どもの人格ではなく、子どもの行動に対応するものなので、子どもとの関係は損なわれません。子どもが仲良く遊んでいるところを見たことがあり、仲良く遊べることを知っている旨を伝えて、仲良く遊べたことを褒めましょう。

 

ケーススタディー:トビーの怒りへの対処
4歳のトビーは反抗的になり、登録チャイルドマインダーのアンジーの言うことをしようとしません。彼はアンジーと他の子どもに対して乱暴になり、腹を立てるようになりました。
アンジーは彼が9カ月のときから保育しており、彼の姉も放課後にアンジーのところに来るので、アンジーは2人の母親を非常によく知っています。
アンジーはある夕方、仕事の後に母親に電話して、トビーについて話し合いました。母親は涙ながらに、彼らの父親が出ていってしまい、そのことでトビーが非常に動揺していること話してくれました。アンジーはこの母親と良好な関係を築いていなかったら、トビーの行動を理解できなかった可能性があります。

  • トビーが怒りに対処できるように、あなたならどんなことをしますか。
  • トビーの反抗的な行動に、どう対処しますか。

 
保護者との有効な協力関係がある場合、子どもの行動に、一貫した方法で対処できる可能性が高まります。協力関係を築くには、両者の時間と労力が必要です。子どもがしたことの否定的な面だけを保護者に報告することは、協力関係の構築には特に有益ではありません。
また子どもが非常に困った行動を示しているときは、前向きになるのが難しいことがあります。保護者への対応では常に誠実でなければなりませんが、非常に対応が難しい子どもでも、昼食を全部食べたり、上着を正しい場所にかけたりするなど、何かしら肯定的なことをしているはずです。必ず子どもをその場で褒め、保護者に伝えます。
 

評価への課題

評価基準7.2

行動と期待に関する基本ルールを構築し、実践する方法を説明する。
【保育・教育顕彰評議会タスク9】

書面での説明は、好ましい行動を育成するための方針および手順を基にすることもできる。方針および手順を盛り込み、説明ではそれらに言及すること。基本ルールの作成方法、誰が参加したか、また保育するすべての子どものニーズに応じると同時に公正で首尾一貫したものにする方法について説明する。

保育・教育顕彰評議会タスクに従っていない場合は、好ましい行動を育成するための方針および手順を出発点として、評価者と専門的な議論をすることで、この基準の根拠を示すこともできる。

 

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