虐待の種類

これまで全体を通じて、保育する子どもの安全確保について、最善を尽くすよう強調してきました。家の中や庭で起こりうる危険や危害について検証し、自身の仕事場ではどのように子どもの保護を徹底しているかについて考えてきました。また保育する子どもの福祉を守る手助けをする方法について理解することも大変重要なこととなります。

重要用語
安全確保 - 子どもの幸福を守り、監督し、維持すること

 
虐待は、家族構成や育児スタイルに関係なく、どのような家庭にも起こりうる問題です。虐待は貧しい家庭や一人親家庭の子どもにのみ発生するものではありません。虐待はどの子どもにも等しく起こり得るものなのです。「立派な」家庭の子どもは虐待されず、自ずと守られていると決めつけてはいけません。

任意の時点で保護を必要としている子どもの数を正確に把握することは非常に困難です。全英児童虐待防止協会(NSPCC)などの慈善団体が、子どもを守り意識を高めるべく不断の努力をしていますが、それでも子どもが虐待されています。全英児童虐待防止協会が、6人に1人もの子どもが虐待された経験をもつ可能性があると示唆した際、これは実像を誇張していると唱える人もいました。虐待されている、または保護を必要としている子どもの多くは、さまざまな理由から、自らの経験について口を閉ざしています。虐待はその子どもと接触のある他の人々の目には明らかでない場合があるため、対処が非常に難しく、時には手遅れとなる場合があるのです。

 

虐待の種類

 
一般的に児童虐待には4つの形態があると考えられています。
 

ネグレクト

ネグレクトは「育児放棄」とも言われ、ある意味この種の虐待を要約しています。子どもは成長と発達に必要な適切な保育を受けられず、文字通り放棄され、自分で自分の面倒を見ることになります。
子どもが必要なときに医療や世話を受けられなかったり、十分な食品や適切な衣服を与えられず、清潔に保たれなかったりすることもあります。
子どもを放置する保護者は、子どもをネグレクトしているとみなされる可能性があります。したがってその保護者は子どもを虐待していることになるのです。

ケーススタディー:ホームアローン
報道によると、ある母親が7歳と9歳の子どもを2人きりで家に残し、休暇で1週間スペインに行きました。母親は冷蔵庫に食品を少しと、少額のお金を置いていったが、休暇から戻ると逮捕され、ネグレクトで告発されました。

別の事例では、子どもの手の届くところに放置していたメサドン(合成鎮痛薬)を子どもが誤って摂取し、病院に急いで搬送された後、その両親がネグレクトで告発されました。

  • なぜ、この2つの事例はネグレクトなのでしょうか。
  • 子どもにはどんな影響があると考えられますか。

 

身体的虐待

身体的虐待は叩く、揺さぶる、過剰な力を用いる、たばこでやけどを負わせる、アルコールや薬物など子どもに危害を与える可能性のあるものを与えるなど、大人が子どもを傷つける場合に発生する可能性があります。
 

平手打ち

子どものしつけのための平手打ちと身体的虐待の線引きは非常に微妙です。手を軽くたたくのは、人によっては許容範囲内だとみなされる可能性がありますが、子どもを物でたたくのは犯罪だと考えられます。
近年、保護者がしつけのために子どもをたたく権利をめぐり、議論が激化しています。スウェーデンなど国によっては、保護者はどんな形であれ、子どもに身体的な罰を与えることを許されていません。多くの教育専門家や保育専門家は、子どもをたたくことはしつけの手段として効果的でないと考えています。子どもは暴力的になり、他人を故意に傷つけることが許されることだと学んでしまうと専門家は感じているのです。

現在でも、保護者は子どものしつけのために「妥当な懲罰」を用いることができます。ただし全英チャイルドマインダー協会(NCMA)のすべてのメンバーは、全英チャイルドマインダー協会の質の基準(NCMA’s Quality Standards)の一環として、子どもに対し「ぴしゃりと打つ、平手で打つ、揺さぶる、または屈辱を与える」などは行わないことに合意しており、保育実践者が何らかの形の身体的な罰を用いることは違法となります。就学前教育基礎段階の法定枠組み(Statutory Framework for the Early Years Foundation Stage)でも、保育提供者は威嚇したり体罰を用いたりしてはならないと明言されています。

考察
あなたは平手打ちについてどう思いますか。これについてはそれぞれ個人的な考え方があるでしょう。子どものときに保育者自身が平手打ちされた経験がある人もいるでしょう。
保育者自身の子どもをしつける方法として、平手打ちを用いている、または用いていた人もいるかもしれません。平手打ちの問題の両面について、他のコースメンバーと話してみましょう。
このことについて話せる他のコースメンバーがいない場合は、家族、近所の方、または友だちと話しましょう。

考え方や意見を他のコースメンバーと徹底的に話し合うのは良い習慣です。これにより知識や理解を深め、問題をより意識できるようになります。また、このテーマに関する本をさらに読んでみるとよいでしょう。

話し合いのテーマ

  • 平手打ちは、大きな人が小さな人を傷つけてもかまわないということを子どもに教えることになるという考え方について
  • 「私は子どものときに平手打ちされましたが、悪い影響はありませんでした。私は善悪を学んだのです。今日、子どもを平手打ちする親がもっと多ければ、青少年犯罪はこれほど多くないでしょう。」という一部の大人の意見について
  • 平手打ちが子どもの暴力を助長することについて

 

性的虐待

大人が子どもを自分の性的満足のために用いた場合、その大人はその子どもを性的に虐待していることになります。これには、子どもの知っている人または知らない人による、レイプ、挿入、性交から性器や身体のその他の部分(胸など)の愛撫まで、あらゆることが含まれます。
性的虐待には、大人が子どもをポルノに関する活動に巻き込むことも含まれています。虐待は徐々に始まり、時が経つにつれて進行していくこともあります。性的虐待を受けた子どもは、これが大人を喜ばせ、大人の愛と承認を得る方法だと信じこんでてしまうこともあるのです。
 

感情的/心理的虐待

大人が子どもに十分な愛情を示さないと、子どもは自信を失い、内気で神経質になる可能性がでてきます。これは感情的な虐待の1つの形態であり、同様に、威嚇、言葉による虐待、または子どもに対しどなることが続くと、長期的に有害な影響を与える可能性があります。
 

いじめ

いじめも虐待の形態の1つであり、身体的、感情的、および心理的なものがあります。近頃ではいじめは顔を合わせているときだけでなく、携帯電話、ソーシャルネットワークサイト、およびインターネットのチャットルームなどでのいわゆる「ネットいじめ」も問題となっています。
子どもには安全で保護されていると感じる権利があり、安全でないと感じる場合に打ち明けられる人をもつ権利があります。虐待やいじめから自らを守るには、子どもは自信を持ち、十分な自尊心と肯定的イメージを持っている必要がある。虐待やいじめを受けた子どもは、十分な自尊心またはセルフイメージを持っていないことが非常に多く見受けられます。
 
子どもには以下のことが必要です。

  • たくさんほめられ、励ましを受けて自尊心を高めること
  • 自立を促す機会
  • 自己主張能力を高める機会
  • 選択する機会
  • 感情や願望を表現する機会
  • 失敗や「何かを間違える」ことを恐れずに成功する機会
  • ニーズや年齢、および発達段階に合った活動や経験
  • 子どもの間で忍耐、敬意、協力を引き出す良き手本
  • 個人として尊重され、評価されること
  • 年齢に合った活動を通じ、解剖学的な正しい言葉を使って、自分の身体についてきちんと理解すること
  • 相談でき、信頼できる大人
確認
慈善団体Kidscapeは、キープセーフ規範(Keepsafe Code)を考案しました。この規範は、例えば「ノー」とはっきり言うなど、9つのわかりやすい指針を示したもので、子どもが自分の身を守るのに役立ちます。

 

ケーススタディー:トムの感情的問題
12歳のトムは感情および行動の深刻な問題を抱える子どものための、小さな学校に通っています。彼は他の子どもやスタッフに対して、たびたび乱暴で虐待的な行動を示し、非常に非協力的で、クラスの活動にも参加したがらない傾向がありました。
ある朝、彼はいつも以上につらそうで、頭を抱えたまま床の上に長い時間座っていました。トムと穏当な関係を築いているスタッフが、どんな気持ちなのか話してみようと試みました。Tトムはこの教師に、母親がいつも彼を産まなければよかったと言っており、自分を嫌っていると話してくれました。

  • これが感情的虐待の1つの形態といえるのは、なぜでしょうか。。
  • この教師はトムを助けるために何ができたと思いますか。

 

考察
子どもは隠し事をすることを奨励されるべきでしょうか。隠し事をすると子どもが用心深くなり、ものごとを話したがらなくなる可能性があるということもできます。また隠し事をすると、子どもはその秘密を守るために本当のことを話さない可能性があるので、不誠実さを助長する可能性があるともいえます。

 

課題一覧へ戻る→